2013年5月17日金曜日

『イスラームの世界観 「移動文化」を考える』 片倉もとこ 岩波現代文庫


去る2013年2月23日、片倉もとこ先生がご逝去されました。

勉強不足をさらすようで恥ずかしいのですが、この方の本もほとんど読んだことがなくて、先生のご逝去をきっかけに少しずつ読み進めています。アマゾンで頼んで最初に来た本がこの本だったので、読みましたが、なぜ今まで読まなかったのか…という後悔の念にかられました。

人はなぜ移動するのか?

僕はここしばらくストリート・チルドレンのことを研究してきているのですが、ある意味、究極的な問いはここにあります。遊牧民の宗教としてのイスラーム。これが根底にあるのはなんとなくわかりつつ、どうも言葉にならないことが多いし、アフリカの人といても、大局的な移動観にまではまったく到達しませんでした。この本では、ずいぶんたくさんの言葉を紡いでイスラームにとどまらない、人類史的な意味で、人はそもそも移動するものだ、という命題をもっているように読めました。

さらに伊勢神宮の遷宮を端緒に、現代日本社会をこのように説きます。

「日本の終身雇用システムは、それなりにいいところもあった。しかし、雇用する方も、されるようも、しばられてしまう、しんどいシステムである。人間を、一か所にとどめておく「定着文化」はさまざまなところでいきづまっている。生理的な「うごき」を持つがゆえに、女性は職場から締めだされ、男性は悪名高き「会社人間」にしたてあげられた。ここらで、日本の「定着文化」を「移動文化」に移行させねばならない気がしている。」(192)

近代社会は資本集約的であって、ゆえに人々が定住していることが前提。さらに、権力はその管理のしやすさから人々が定住していることを好みます。しかし、片倉先生がおっしゃる通り、定住文化の爛熟した日本では、このレベルの見直しが必要だ、ということ。

近年、非正規雇用が問題になっていて、かくいう僕もそのカテゴリーに入っているのだけど、そもそも個人商店的な研究者にとっては、まさにこんな文化の中に存在しているのだ、ということを改めて感じさせられました。

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