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ブルキナファソ調査【20191217-20200117】③Sagbotenga(2回目)-1

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年が明け、今回の調査のメインイベントのSagbotenga訪問。昨年4月にIbrahim Sanfo師が95歳(推定)という長寿を全うし、以来初めての訪問となる。Ibrahim師は、酷暑期の4月、普段通りに夕食の粥を食べた直後に苦しみ、横になっていると皆が気が付かないうちに亡くなっていたという。亡くなられた長老は、私が最後に会った2018年8月の時点でも、若干耳は遠くなっていたが、最後まで矍鑠(かくしゃく)とし、私の質問に丁寧に答えてくれた。

Ibrahim師は、私に何を伝えてくれたのか。もちろん、モシ社会に居ついた商業民、ヤルセの歴史や、ブルキナファソ(モシ)のイスラーム社会におけるSagbotengaの位置づけ、また、Ibrahim師が若かりし頃のブルキナファソの様子など、文献ではなかなか知りえないことは聞き取れたが、それだけにとどまらない。お会いするたびに慈愛に満ちたまなざしで出迎えてくれて、師よりもよい椅子を勧めてくれ(もちろんそんなのには座れない)、村で食事をとる時などは、わざわざ鶏を絞めてくれたり…老師の教えは彼の所作や、人に接する態度、客を迎えるときのもてなしなど、人間的なところに至るすべてにおいて「師」と呼ぶにふさわしい方だった。
しかし、Ibrahim師の雰囲気は、東野英治郎の水戸黄門。いつも微笑みを称え、ちゃんと冗談も言うお茶目な側面があり、こちらの質問に対しては、にこやかな顔をそのままに、一生懸命に昔のことを思い出し、その時にあるすべての情報を与えてくれる。ソフトな知識については、きっとこの後も「もう一度お目にかかって話を伺いたい」と思うことが多々出てくるのは間違いない。その意味で、もっと勉強しておけばよかった…と後悔することも間違いない。
しかし、これも天命。Ibrahim師には二度とお目にかかれないが、彼の隣にたたずむ聡明そうな若者はSeydou Sanfoさんと言い、Ibrahim師の集落の隣の集落で生まれ育った。彼はニアメの大学で歴史学を修め、現在、Fada N'gurumaのフランコ・アラブで教鞭をとる23歳。前回の調査のときに2日間だけ一緒に村のなかを回ったが、とても優秀で、一緒にSagbotengaのことを学ぼう、としている。こうした楽しみな若者が様々な点を保管してくれるだろう。


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ブルキナファソ調査【20191227-20200117】②年末年始 

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すでに帰国してしまいましたが、ブルキナファソ調査のこと、少しずつ書き留めておきたいと思います。
その前に、ずいぶん遅くなってしまいましたが、まずは新年のご挨拶を。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。

12月27日に日本を発ち、現地時間の28日夕方に到着。2019年も残すところ2日ほど。もちろん、年越しはブルキナのつもりで来ていたので、年内はできること(準備)をしておき、年明けからのつもりで滞在が始まりました。ただでさえ短い滞在なのに、さらに年末年始を挟む、ということで、実際に調査に使えるのは1週間前後という予定での調査です。

しかし、久しぶりにダラダラした調査もできるということで、(のちにそんなことを言っていられなくなりますが)気持ちを穏やかに、ゆっくりと街を見、人と話そうと思っていました。

ただ、そうは言っても年末年始。とりあえず食事の確保くらいは、と思い、予定だけは立てようということで、現地にいらっしゃる日本人の方、また、ドライバーのアブドゥルにお願いして遊んでもらうことに。結果、31日は大使公邸で「紅白歌合戦を見る会」、元旦はアブドゥル宅を中心にフェットをしているお宅を回る、ということになり、何とか餓えた年末年始は避けることができました。


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ブルキナファソ調査【20191227-20200117】①

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師走、大き目のイベント2つ、研究発表3件を終え、本年の仕事は締め切りをブッちしてしっている原稿を残すのみ。これが終わると、ブルキナファソ調査に出ます。今年度は調査資金の関係で、今年度内に後3回ほどアフリカを往復せねばならず、時間的な都合上、久しぶりにブルキナで年越しになりました。

上の地図を見ていただいてもお分かりの通り、レベル1のエリアは益々狭くなり、行動範囲は益々狭くなってきています。所属先でもかなりピリピリしていて、10通を超える書類を準備せねばならず、書類が通るのに3週間を要しました。今回からは、プロジェクトのサイトを持っていたバム県には行かず、ワガドゥグと南の方のいくつかの対象地を調査地としていきます。

バタバタとイベントごとと事務仕事が続き、ようやく昨日あたりから現地の友人たちと連絡を取り始めて調査の中身の調整を始めました。年々短くなる滞在期間、日常で研究に使える時間。フィールドでのんびりとしている時間は本当に少なくなってきました。そして、研究の仕事も何かと増えてきました。何とか短い時間で中身の濃い調査を、そして、少しでものんびりとあたりを見回せる余裕を。



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公開座談会「現代アフリカカルチャーの現在地」(12月21日)@京都精華大学

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年の瀬になりますが、12月21日にこんなイベントを行います。

大学院に入った時の師匠である和崎春日先生、僕らより少し上の西アフリカの文化研究をけん引された鈴木裕之先生、そして、僕らの世代の映像人類学、文化研究の気鋭の研究者である川瀬慈さんをお招きして公開座談会を行います。

この座談会をまとめたものは、現在準備中の同名の本の「まとめ」にあたる部分掲載されます。

お申込みは必要ありませんが、部屋が狭くなっておりますので、ご希望の方はお早めにいらしてください。



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ご恵投いただきました『あふりこ フィクションの重奏/偏在するアフリカ』

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編者の川瀬慈さんよりご恵投いただきました。先日、執筆者の一人、ふくだぺろさんからこの本のことを少し伺っていて、ぜひ購入しようと思っていた矢先の行幸でした。

この著作は副題にあるように「フィクション」を編むという、僕らがずっと接してきた「客観的な」記述を積み重ねる書物とは一線を画する。せいぜいノンフィクションまでは、自分でやってみようと思ったが、この発想はなかった。早速読み始めているが、サイエンティストであり、アーティストである編者と著者が意識的にサイエンティストの立場から距離を取っていることがよくわかる。川瀬さんによる「結びにかえて」には、こんな一節がある。

「我々が普段身を置く、アカデミックなシステムや学問的規約の中で枯渇させたくなかったものはいったい何なのだろうか」(338)

今や、こんな瑞々しい思考すら縁遠くなってしまい、はっとさせられるのだが、アカデミックな場における自由な発想はロジックからだけでは成立するわけもなく、常にこうした柔らかい頭が必要だ。特に公務に教育に忙しくし、なかなか研究する時間のない研究者にはお勧めしたい一冊である。




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ご恵投いただきました。『アフリカで学ぶ文化人類学 民族誌がひらく世界』昭和堂

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執筆者の中尾世治さんよりご恵投いただきました。

文化人類学は、その定義にかなりばらつきがあり、よって「これ」といったテキストもない。

執筆者の中尾さんと僕は、地球研の同じプロジェクトに所属している。僕らの周囲の多くは自然科学者で、中でも工学者が比較的多い。現在、プロジェクトの最終成果物として、私たちが研究してきたことを「教科書」にまとめようという計画が進んでいる。「教科書」と言った時、工学者にとっては、ある意味で「定本」、偉い先生が書くものという認識が強く、僕らはギャップを感じた。というのは、文化人類学では、ポスドクくらいの人が「教科書」っぽいものを書いてしまう。この本の編者陣は、それよりもだいぶ上の世代だけど、文化人類学の領域の中では、中堅どころの元気のいい世代と言ったところか。

この本は、このあたりを十分に理解した上で書かれていて、編者自身が、バランスのいい教科書などない、いろんなものを取り入れることでバランスをとるのだ、というスタンスに立ち、法人類学、芸術人類学、歴史、生態と多様なテーマの論考が続く。しかし、寄せ集めということでもなく、ちゃんと、それぞれの領域の古典文献に沿って書かれているあたりは、講義で使う上でも大変ありがたい。

息の長いテクストになることを祈っている。


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IS首領殺害後のブルキナファソのテロ報道の展開

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相変わらず何かとざわついているブルキナファソの治安状況。ニュースを眺めていて少し気になったことがあったので、ちょっとメモしておこうと思う。

10月27日のニュースでトランプがISの指導者バグダディを殺害したことを発表した(BBC, 20191027)。中東のISと西アフリカのISがどれほどのつながりを持つのかは、おそらく知る人は少ないと思うのだけど、少なくとも、アメリカが、自分たちに連なる重要人物を殺害した、ということは、とても象徴的な出来事であったと考えられるし、間違いなく何らかの形で影響がでるだろう、と考えていた。案の定というか、その後の事件の状況を見ていると、10月27日以降、今日までですでに10件の殺傷事件が、特に北部、もしくは、欧米諸国の重要拠点で起きている。その前の1か月だけで見てみると、5件の殺傷事件が報道されていて、単純に倍になったことがわかる。ニュースを読む限りでは、正体不明の殺傷事件というよりは、むしろ、バグダディ氏殺害の影響とみた方がよいように思う。

そして、時を同じくして、興味深い別の動きがあった。これは、ちょうど在ブルキナファソ日本大使館が危険度を更新(2019年11月15日)し、レベル2のエリアを拡大した翌日から起こっている。日本の危険度変更がそれほど影響するわけではないだろうが、それから3日間の間に、「テロリストを撃退した」という論調のニュースが立て続けに報じられた。おそらく、実際にそうだったのだろうし、ジハーディストの動きがある程度把握できるようになったためか、もしくは、仏米の後方支援やマリとの共同戦線が機能したことによるのか、もしくは、こうした報道ばかりを流しているだけなのか…

しかし、いずれにしても、トランプの支持率回復だけを見こしたバグダディ殺害は、良い影響はなく、西アフリカの状況は少しずつ泥沼化しつつあることは間違いなさそうだ。

(20191127更新)

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