『福田村事件』森達也監督(ピカンテサーカス/137分)/ちょいネタバレ

昨年来、少しずつ在日韓国人のことを勉強し始めているのは、何度かこのブログでも書いてきました。最近もウトロ平和祈念館に行ってきて、その前にも東京の高麗博物館、ニュースパークに行ってきたのですが、そこでしばしば見たのが、『福田村事件』のチラシ。タイミングとしても、これは見ておかねば、と思っていたのですが、残念ながら公開中には間に合わず、DVDを購入することにしました。

「福田村事件」は、関東大震災が発災した数日後に、薬売りの行商人たちが朝鮮人と間違われて自警団により虐殺された、という事件。「朝鮮人が井戸に毒を盛る」など、あらぬ噂を流されて暴力を加えられた多くの事件、「デマ」や「フェイクニュース」の問題など、様々な問題群をはらんでいる。ちなみに、ニュースパークの展示でも新聞が流言を報じた報道やそれを打ち消す記事などが展示されており、メディアの問題としても考えることができる。

一昨日DVDが届き、早速視聴した。森達也さんが監督、井浦新、田中麗奈、東出昌大、柄本明やら、出演陣も豪華でなかなか期待させる配役だ。戦前の軍国主義と張りぼてのような「大正デモクラシー」の相克の中、日本の「村社会」の閉鎖性がよく描かれ、ほんの少しずつ当時の女性蔑視的な雰囲気が引き金として、群集心理に働きかけ、さらに、災害の中で自衛への心情が絡みついていく。しかし、この辺の描写は後半70分程度で描いたものだけで十分。最初の45分程度は、どこかロマンポルノを思わせるようなちょいと艶っぽいシーンが続く。この描写がどこで回収されるのだろう…とみていると、襲撃された村のドロドロした雰囲気を描いたこと、また、不倫により信用を失った人たちが実は一番冷静だった、という、アンビバレントな人間心理を描く、というこの「福田村事件」という、在日韓国人への風評の二次被害という側面を若干弱めている。私個人としては、『A』などを描いた硬派なドキュメンタリー作家のイメージで見ていたので、若干残念な作品だと感じた。



 

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