学会を振り返る。

学会が終わった。

確かにここのところの一番の大仕事。ずいぶんたくさんの方に発表を見てもらって、たぶん今までで一番丁寧に作れ込めたものだったけど、結果は…なんか微妙だ。研究室の方もたくさん来てくれて、ずいぶん改良されたのに気付いてくれて、「分かりやすくなった」と言ってもらったし、親しくさせていただいている方からも、会場で質問、ご意見をいただき、それがありがたくて有意義だったのだけど…

課題点は、子どもたちの声が聞こえない、ということが一番大きい。理論フレームは古いものだけど、今でも十分に耐えられるもの、言いたいことは、言説にとらわれてはいけない、ということだけど、僕の発表自身がそれを乗り越えられていない。時間の問題もあるけど、本当のところは少々データに自信がないため。今後の課題、としたいところだが、件の暴動の影響で今年度は少々入国することすら難しそう…今までの資料を整理しながらなんとかしないといけないかな…と思っている。これは、これから考えよう。

割と舞台度胸はいいはずなのだが、ここのところ、学会では準備をすればするほど緊張する。ジメッとした気候のせいもあるだろうけど、発表中、一人で滝のような汗。これはこれで以外に凹んだ(笑)。

今回の学会では、僕は「子どもグループ」に入れてもらったみたいで、僕の後に3人の子ども発表が続く。一人は、研究室の同僚ですでに耳にタコができるほど聞いているので、他に聞きたい人の発表を聞きに行ったけど、懇親会での意見交換はずいぶん勉強になった。人類学の子ども研究は目の前にあるものは目を通したけど、子ども環境学会とか、子ども社会学会といった学会もあるらしい。また、理論もずいぶんいろいろあるようで、これからもっと勉強させてもらおうかと思う。

後は、今年2度目を迎えた若手研究者懇談会。とてもいい試みで、去年から学会長をされているW先生との親和性も高く、学会が非常に活気づいた印象を持っている。今年は、震災を被災された若手研究者の話のシェアリングが中心だった。研究者の中にも、何人もがボランティアなどを行った、という報告もあった。いいことだと思う。

このシェアリングでは、人類学者に何ができるか、どう動くべきか、と言った議論が中心にあったと思う。ある方は、「有形・無形の文化財の保護も今我々に可能な大きな仕事」といい、「行動よりも今こそ考えるとき」といったようなことを言った。「行動よりも…」という意見が出た時、阪神の時、人類学者は何をしていたのだろう…と考えていたら、他の方が付け加えて言うに、「何もしていなかった」とか…

僕は、ちょこっと募金をした程度で、何を言う資格も持ち合わせていないし、会場で無言を通して今更こんなブログで呟いてみることにどれだけの意味があるかわからないけど、人類学者の機能はもっと広がりがあって、そういうことを話す人がいてもよかったかな、と思う。何回かブログにも書いたけど、「何もしていなかった」人類学者に対して、阪神のときにずいぶん議論が行われたNGOやNPOの動きは括目すべきものがある。僕はここの人たちの動きしか追っていないので、もっといろんな分野の人、組織が動いているかもしれない。とにもかくにも、ひとつの組織集合体としてのNGOの活動規模は小さいながら、実に体系的に動いていると思う。学ぶこと、考えることも大切だけど、実践として関わりを持って、次に備えるニーズを捉えること、また同時に、そのニーズを満たすこと、言いかえれば、動きながら考えることが大切なのではないかな。

でも、その前に、「動く」ためには、自分たちの足元が固まった人でないと難しい。若手研究者懇談会は、若手がもっと活躍できるように、と作られた懇談会。前日の学会長の懇親会での談話で、毎年4000の大学ポストを16000人の博士保持者が争うのだとか、人類学会の3分の1が院生と期限付き職持ちだとか…同じ器の中で考えると、もう判断できなくなるのだけど、あまりに歪な状況だ…

ともあれ。学会は今年もとても充実していたし、学ぶものは多く、何人もの人と知り合い、何か先に進むためのヒントも得られた。すぐに出発で、また自分のノルマ(書きかけの論文とか…)は達成できないのだけど、成果と課題をすり合わせて、来年もどこかで見てもらおう、と思う。

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