『繕い裁つ人』(映画)


今回の出張はANA便だったこともあり、往復で邦画を5本も見られた。その中の一本。

中谷美紀主演で、三浦貴大や片桐はいり、伊武雅刀などの渋い役者さんを配し、最近の注目株の杉咲花や黒木華なども目を引く。

舞台は神戸で、レトロな洋風な街の感じもとても心地よい作品となっている。南洋裁店の2代目を中谷美紀が演じる。カリスマ的な仕立て屋の祖母から手習いを受け、祖母の死ののち、南洋裁店の跡を継ぐ市絵(中谷美紀)は、祖母のスタイルを守り、「一生着られる洋服」を作ることを志す。デパートに勤める藤井(三浦)は、市絵の作る洋服をブランド化しようと市絵を口説くが、それには一切耳を貸さない。映画の最後まで、市絵の頑なな志は曲げられることはなく、市絵の作る洋服を愛する神戸の人びとにより、毎年一回、最高のおしゃれをして夜会が開かれる。

一時の大量消費社会的な風潮は、今や批判の対象でしかなくなったが、デフレ社会での安価なモノは我われの生活の中にすっかり浸透し、こうした社会風潮とは逆行しているのが現代社会のあり方なのだろう。しかし、「貧乏人の安物買い」とはよく言ったものだが、最近は安いものでも、丈夫にはなって、割と耐久性は上がった。が、それは安心を与えるものであっても、決して心の充足を与えるものではない(?)。裸で生活しなくてもよいようにはなったが、毎年スーツのサイズを仕立て直したり、ズボンの丈を調整したり、そんなことは僕もまずやったことがない。自分でもそんな良いものを持っているという認識がないからだし、きっとそんなことをしたら高くつくのではないか、と思ってしまうからだ。

でも、革靴などは、ある程度のものになると、手入れさえすれば、10年くらいは十分に持つ。大事にすることが大切なのだ。少し自分のモノや身なりに気を遣うこと、そのことによって、生活がずいぶん潤うのだ、ということを美しい映像もさることながら、とても穏やかな雰囲気で伝えてくれる良作。

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