原武史2012『レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史』新潮社


原武史さんは僕の母校で教鞭をとっている。確か、僕が卒業するのと着任されたのがそれほど違わないので、実際にお目にかかったことはないが、その後の後輩からの情報では「右翼」という声が聞こえてきた。校風として逆側の人ならよくわかるが、なんでまた…ということを思ったことを覚えている。しかし、それから10年ほど経って、『滝山コミューン』を読んだ。これは大学院の後輩がフィールドに滝山団地を選んだからで、なんとなくよくわからないけど、なんで多摩にそんなもんがあるんだ、と不思議に思って手に取った本だった。まあ、もちろん、原武史さんが右翼でもなんでもないことはその本を読んでよくわかったのだが(きっと天皇制のことを嫌悪せずに正面から取り組んでいたので、そういわれたのかもしれない)。

ともあれ。この本を読んで、この人のデータ・マニアぶりは改めて驚いた。本当によく調べているし、そもそも、空間と政治思想史をくっつけようとしたその着想、これは読み進めていくうちに、「なるほど」と思わせる節がいたるところに出てくるのだが、とにかく地道なデータ収集の中からその地域の住民の思想的傾向をあぶりだしていく。そして、ロシア(旧ソビエトとして)、アメリカの空間構成と西武線沿線と中央線沿線を対比させて思想的傾向をあぶりだしていく手法は実に興味深かった。着想を温めてデータで固め、空間を眺めるという作業をどれくらい繰り返したのだろう。

ただ、少し気になったのが、住空間の構成とそこで醸成される思想というのが、どれほど因果関係があるのか。社会運動が起こりやすい空間というのがあるのだろうか。そんな疑問は残った。これはまた違う分野の仕事、なのかな?

しかし、また手に取ってみたいと思わせる作家さんでした。


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