道尾秀介2012『ノエル a story of stories』新潮社


恒例の出張前のジャケ買いで手にした本です。今回は3冊。読みかけの本、何冊かを今回の出張中に読んでしまおうと思っていて、文庫に絞って買い込みました。今までの経験で、道尾秀介の作品はほぼ外さないので、最近毎回のように買っている気がします。

3つの小話が次第に一つの話に紡がれていくという仕掛けと、それをつなげる童話、そして、もちろん3つの話に少しずつ重なるそれぞれの話の登場人物たち。幾重にも重ねられた仕掛けは裏表紙に書かれている様に「最高の技巧」と呼ぶにふさわしい作品だったと思う。

道尾秀介の作品は、どれも後味の良さが残る。必ずしも完全なハッピーエンドである必要はないし、たぶん物語中の時間の経過で致し方ないアンハッピーは取り返しのつかないものになるはずで、そうしたところもうまく掬い取っている、そんな印象を受ける。僕は記憶力が良くないので、極端に多い登場人物や複雑な仕掛けのものはあんまり得意ではない。この作品もそうなのだけど、そのあたりのバランス感覚や、適度なカタルシスは、言ってしまえば大衆的ともいえてしまうかもしれなけれど、それぞれに考え抜かれた誠意を感じる作家、ということです。

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