「驚き、学び、励ます:サーヘル地域の砂漠化研究における研究者と調査対象者のかかわりから」(日本地球惑星科学連合(JpGU)@幕張メッセ、20160522)

(http://www.jpgu.org/meeting_2016/より)

先ほどのエントリーに続き、怒涛の学会シリーズ。北海道で研究会2連チャン(昨日のものと、もう一つは打ち合わせ研究会にて割愛)から、そのまま東京に戻り、そのまま「日本地球惑星科学連合」という学会(?)で発表します。この学会にすっかり巻き込まれてしまった前職お隣さんの手代木さんからのヘルプ(数合わせ、だと思っていますが…)と同じセッションです。

発表内容は、以下の予稿の通りですが、どのようなことが言いたいか、と言えば、科学知はそんなに偉いのか、ということ、また、もっと人びとに目を向けましょう、ということ。いつもながらの主張ですが、今回は、エティックとエミックという文化人類学で用いられる二つの思考体系(ここまで言っていいかな…)というか、視座から、フィールド知について話題提供しようと思っています。きっと、こんな話でいいはずなのですが、さて、どれくらい反応があるか?

それにしても、この学会の名前、前の職場も「地球研」という名前で、スケールだけは大きかったですが、もはや「宇宙レベル」。

*****発表予稿*****

「驚き、学び、励ます:サーヘル地域の砂漠化研究における研究者と調査対象者のかかわりから」

キーワード:エティックとエミック、砂漠化、ローカル・ノレッジ、文化の翻訳、国際開発

 私たちが研究者であれ、開発実務家であれ、私たち「先進国」の関与者が「途上国」携わるのは、技術や社会サービス、福祉の向上がその本質的な目的であると言えるだろう。本発表で挙げる「砂漠化」問題も、気候変動など自然変動要因による土壌劣化に起因する「砂漠化desertisation」と、人為的要因を包含する「砂漠化desertification」は明確に分けて考えられている。まず、本発表で提示する事例は、後者のDesertificationにまつわるものであることを述べておきたい。
 この事例では、ニジェール、ブルキナファソのサーヘル地域で、砂漠化の代表的な現象である、水食予防と対処に関しての研究プロジェクトを実施した際の調査対象者(農業を営む人びと)と研究者(発表者)の関係性に着目していく。研究者は文化人類学者で、農業や気象、植生には全く知識はない。よって、他の研究者からこうした知識を学びつつ、フィールドにおいて人びとの知識や技術を学んでいく。この過程で、研究者が気づくのが、ローカルな知識や技術と科学知の間に大きな差がないこと、そして、ローカルな文脈で使われる知識や技術は固定的な「伝統」知/技術という言い方で表現されるような静態的なものではなく、研究者や支援活動従事者との間のインタラクションを包含した動態的な視点からとらえなおす必要があるということである。

 以上の事例分析から、調査や支援の在り方を考えるとき、文化人類学で用いられる、エティック、エミックという概念がヒントになるだろう。これらは、構造言語学に起源をもつ語で、エティックは外部者からの立場で記述・分析をすること、エミックは内側からの視点を元に分析する姿勢のことをいう。ローカルなものに根差した知識や技術を構築していくことが科学や研究者の至上命題だとすれば、科学的な知の検証(エミック)とローカルな知からせり上げるエティックな研究方法がとられる必要があるだろう。こうした考察から研究や支援活動が教条主義から脱し、相対主義的なかかわりをもつ必要性があることを指摘していきたいと考えている。




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