「ワガドゥグにおけるイスラーム教育と近代化の可能性」(5月20日 第15回アフリカ研究会@札幌)

5月、6月の学会シーズンに突入しました。今年は貴一朗も生まれたし、少し家にいる時間を増やそうと思って、何と文化人類学会(しかも南山大学開催)を欠席したのをはじめ、学会参加を減らそうと思ってきました。しかし、結局、どうしても参加しなければならない義理のあるものが、チラホラ…チラホラならよかったのですが、結構な量になってしまい、なんだかんだと例年並み、いや、それ以上。

その第1弾。5月20日に札幌で開催される第15回アフリカ研究会にお招きいただきました。これまでにいくつかの学会で発表した内容をまとめたものですが、理系の方が多いであろう、オーディエンスを考えて、少し基礎的なところから始めようと思っています。


「ワガドゥグにおけるイスラーム教育と近代化の可能性」

サハラ砂漠南縁に沿うように広がるイスラーム文化圏では、ここ数年間はジハーディストと総称されるイスラーム過激派による暴力の脅威に曝されている。こうした、グローバルな文脈だけでなく、ローカルな文脈においても、長くムスリムの再生産を担ってきたクルアーン学校(école coranique)と呼ばれるイスラームの私塾において、一部のイスラーム職能者(マラブー)による子どもたちへの物乞いの強要、さらにそこで子どもに対して振るわれる暴力が報告されている。その一方で、地域の識者であり、教育者であるマラブーは、イスラームの本質を「寛容さtolérance」とし、クルアーン学校で情熱的に宗教教育を実践するマラブーも少なくない。すなわち、神学上の教義や実践と表出するイスラームは正反対の状況におかれていると考えられる。
発表者は、こうした背景を整理すべく、西アフリカの村落部におけるクルアーン学校を調査し、現在まで、村落の社会システムの中に埋め込まれ、その存在感を示していることを示した(清水2014)。都市部においてはどうか。ワガドゥグ市におけるクルアーン学校は2010年に770校と言われるクルアーン学校は、先述のとおり、社会問題を引き起こしていると考えられているものの、2005年頃から私学化するクルアーン学校が大幅に増加している。それまで私塾的だったクルアーン学校が国家認定を得、私立の学校として変化を始めているのである。本発表では、このような西アフリカの都市部(ワガドゥグ市)におけるイスラーム教育の現状を報告し、学校の現代的変容について論じ、現代アフリカにおけるイスラームの位置づけを考察していきたい。

[参考文献]
清水貴夫2014「ニジェール共和国における伝統教育と社会 ザルマ社会のイスラーム教育」大塲麻代(編)『多様なアフリカの教育-ミクロの視点を中心に-』未来共生リーディングス.Vol5. 大阪大学未来戦略機構第五部門, pp.69-79



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