田中直2012『適正技術と代替社会-インドネシアでの実践から-』岩波書店


この本は今のプロジェクトの仕事に役に立つだろうと思って購入した。

「適正技術」というのは、シューマッハの『スモール・イズ・ビューティフル』に出てくる「中間技術」の概念を発展的に特に途上国開発の文脈で作られた用語だ。つまり、いわゆる「ハイテク」は途上国では維持管理できないから、もっと易しくて安価な技術を用いてそれに代替するような効果を狙おう、という理解でいいと思う。

この本、もっと技術屋がしたり顔で語り出すのかと思いきや、「はじめに」で上のような「適正技術」
論を批判的に切り出すではないですか。うれしい驚きの気持ちを持ちつつ本を読み進めることができた。そして、剋目すべきは、適正技術を、近代科学批判、田中さんが用いた例を簡単に示せば、「公害や再生不可能な資源の浪費、人間疎外などの、近代科学技術がもたらしたさまざまな問題」を解決するための分析概念として捉えていたことだ。この本は、この「適正技術」の二重性を、ご自身のインドネシアでのバイオガス工場の事例と絡めつつ解きほぐすという書き方をしている。

そして、本書の面白さは、田中さんの経歴も大きく影響する。企業、NGO、(おそらく理系サイエンティスト)としての視座が交差しながら話が進む。勝手に読み込んでしまえば、経済性(企業の経験)、理想(NGO)、合理性(サイエンティスト)という側面をもっていることになり、読んでいて、援助系の本でよくあるような青臭く浮ついたところがない。

もし援助関係の分野に進みたい、という大学生がいれば、本書はお勧めしたい。

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