新藤兼人(監督)『裸の島』(1960)


尾道で紹介された一本。ほぼ全くの無声、ひたすら淡々と無人島に入植した家族4人の日々の生活が映し出されていきます。耕し、少ない水を作物ごとにやり、おそらく尾道に子どもを学校に送り、その送り迎えには水を汲み…なんどもなんどもこの光景が繰り返されます。水をこぼし平手打ちを喰らう妻、子どもの死、そして、すべてを投げ出そうとする妻。喜びの瞬間は一瞬で、子どもがタイを釣った瞬間、父は嬉々として子どもを抱きしめ、海に放り投げ、後ろで母と弟が微笑む。曾野タイを持って尾道へ、タイを売ったおカネで食堂でドンブリをかけ込む一家。

生活、生きること、喜びと悲しみ、すべての装飾をそぎ落として剥き出しになる最も単純な感情や人の営みがよく撮れた作品だと思いました。最後のシーンは、子を失った妻がすべてを投げ出してしまいそうになる瞬間、夫は無言で、粛々と水遣りをします。どこかには、「妻の気持ちを察した」と書かれていましたが、果たしてそうだったでしょうか。諦念、優しさ、不安、いろんな気持ちが入り混じっていたように思いました。


コメント

このブログの人気の投稿

【食文化シリーズ】ンゴレ

【日本のアフリカン・レストラン】② Tribes(アフリカン・フレンチ)

ブルキナファソで非常事態宣言