『サンバ』エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ(監督)

監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
主演:オマール・シ(サンバ)、シャルロット・ゲンズブール(アリス)、タハール・ラヒム(ウィルソン)


フランスにおいて、また、日本においても、そして世界のすべての「国」に移民の問題は存在する。そして、この問題はグローバリゼーション(人や情報、モノの国境を越えた移動の活発化)が生み出す象徴的な問題として考えられている。しかし、世界史を紐解くまでもなく、人も情報もモノも、人間がこの世に生まれたころから大なり小なり行われてきた、人間の悠久の営みであった。これが問題となるのは、国民国家、国境が生まれ、そこの出入りを権力が管理するようになってからである。

原理原則論はともかくも、所謂「南」から「北」への人の移動、移住による問題は深刻だ。非常に単純な問題構造として、「南」から「北」への人の移住は、経済的な要因によるものと考えられがちだ。しかし、それが主要因であるとしても、「南」の人と「北」の権力、人びととのかかわり方は多様だ。この映画の監督や出演者が何度も語っているように、そのすべては深刻な問題(悲劇)だけではなく、時にコミカルでシニカルだ。何かこうした問題を扱うときに、社会的正義を振りかざす傾向があるように思うが、この映画はこうした思想が底流に流れているように思う。よって、この映画もそのように描かれている。「南」の人対「北」の権力という図式だけでなく、「南」の人通しのかかわりがあり、また恋愛もある。

移民の扱いは、政治的潮流に大きく影響される。殊に現在の欧米の潮流では、「南」からの移民は歓迎されていないように思う。たとえ、こうした潮流が軟化したとしても、世界が多様である限り、そしてそうでなければならない限り(すべてが一つの基準に収まるということは反面全体主義的だ)、問題の解決はおそらく不可能であろう。であるならば、この映画が示すように、人の多様な営みを様々な角度で理解をすること、まず移民問題を人の営みの問題だととらえ返すひとつのきっかけとなるのではないだろうか。

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