道尾秀介『龍神の雨』

 

誘惑に負けて空港で買ってしまった1冊。行きの飛行機ではウェーバーを読むぞ!と意気込んで搭乗したものの、ついページを開いてしまったが最後。一気に読み切りってしまった。

2,3年前から少しずつ読んでいる道尾作品。どれも非常にクオリティが高い。扱う題材が重いのに話のテンポも、話の展開をもったいぶった感じも、読後感もとても好きな作家。

この作品は複雑な2つの家族の2つの兄弟(妹)が主役。面白く感じたのが、最初に付与された登場人物像がドラスティックに変化していくところ。適当に読んでいると人物を見失ってしまいそうになった。前の作品(『月と蟹』)でも書いたけど、とにかく子どもの心理描写が実に旨い。今回は小学生から思春期、19歳までの子どもが出てくるけど、(小学校5年生は少し大人すぎる気がしたが)、しっかりと書き分けられていて、14歳の少年(おそらく反抗期を想定した)の心理描写は自分の当時の心境をおもいださせるほどだった。

そして、巻末の解説が最後の山場(?)。道尾氏の飲み仲間、という方のものなのだけど、よほどうれしかったと見え、非常に熱のこもった解説。よく読み込んでいるし、こうやって道尾作品を楽しむめ、という気迫を感じた。そんなわけで、最後まで面白かった作品だった。

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