『シャイロックの子供たち』池井戸潤(2008)


ドラマ「半沢直樹」のお蔭でやたらメジャーになった池井戸潤氏。こんな感想文を書いて、やたらミーハーにみられるのがなんだけど、面白いものは面白いので、気にしないことにして。

たぶんこの作品もいろんなところに感想文が書かれているだろうから、すごく端的に。この作品は小説の作りが面白かった。短編小説のように感じながら読み始めると、銀行の一支店の空間を中心として、そこに働く行員とその家族の物語で、ちゃんと一貫性のあるひとつの小説として成立している。

池井戸潤作品の多くは基本的に勧善懲悪調のいわば水戸黄門的に安心して読める作品なのだけど、その意味ではこの作品は少し異色。謎を置きっぱなして読者に委ねるという、ミステリーでよく使われる手法を使っている。

銀行/金融、また、会社という世界を分厚く描く池井戸作品だけど、もしかするとそのうち飽きが来てしまうかな…と思ってしまう。世界観がぶれないので、定番としての位置づけは得られるのだろうし、もしかすると、金融論とか、商学のテキストになっていくかもしれないけど。まあ、かと言ってもミステリー。余計な心配をせずに、たっぷり楽しみたいと思う。

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