【セネガルプログラム】サンルイ②:「(船大工での)フィールドワークを始める」

散発的ではありましたが、今年度は夏のフィールドの報告をたくさん書けました。この投稿ともう一本くらいで打ち止めとしたいと思います。

さて…

サンルイのピローグツアーの後には、ゲットンダールに何か所かある船大工さんのところを訪問。セネガルの海沿いには、カラフルな塗装を施した船が目を引く。

この船がどのように作られ、誰が所有するのか。どのようなタイプの船があり、どれくらいの期間漁に出るのか、だれが船を所有し、誰が漁に出るのか、どのような魚が、どれくらいの量が獲れるのか…何から聞けばよいのかわからないくらいに疑問が湧いてくる。

ともあれ、2008年にここを初めて訪問して以来の好機。船の修理をしているところを見せていただきながら、学生たちといろいろと質問させてもらうことに。船のサイズ、修繕の方法、造船について…冗談を言ったりして少し間を詰めながらゆるりと懐に潜っていく。学生に通訳し、疑問を募りながら、巻き込みながら…

しかし、30分もすると、初めてみる光景であること、かつ、この前のピローグツアーで2時間炎天下で過ごした学生たちの顔に疲労の色が見えてきた…この辺はちょっと計算外。

確かにかなり厳しい環境ではあるので、「昼食」と言って、チェブジェンが運び込まれたところで1軒目は終了。少し車の中のエアコンに当たり、近くにもう一軒修理工場兼造船所があったので、そちらにも訪問しましたが、やはり若干疲れた様子の学生の顔色を見て、ここで終了…調査初期にどのように現地に入り込んでいくか、ということや振る舞いを学生に見せたかったのに…くーっ…

若干不完全燃焼だったことも否めませんが、ファーストコンタクトとしては、なかなか。うまく調査の種として育つか?!と思っています。備忘録、バックアップを兼ねて下に調査時の写真と、写真をFBに上げた際に(思惑通り)いただけた民博の飯田卓さんからのコメントを載せておきます。気になることがあったら教えてください。















 
飯田卓さんとのやり取り(メモ)

飯田さん(以後I)漁船のかたち面白いです。帆をかけて走る船はありますか? 写真に写っている船は船外機で推進するもの?
清水(以後S)帆をかけたものは見られず、基本的には船外機で走ります。驚いたのは、木を継ぎ接ぎした船にプラスティックコーティングをしただけで30年ほどの耐久性があるとか、その船を新造するのに10日間ほどとか、新しい技術で恐ろしく簡単に強い船ができる点でした。プラスティックコーティングがなかったころにどんな技術があったんだろう…とか、写真の鉄芯がなかったころはどうやって木を継いでいたんだろうとか、なかなか興味が尽きない機会になりました。

I:タールのコーティングで防虫効果を高めるということはできますが、耐久性そのものはよい材を使わないと高くならないのではかいでしょうか。比重の重い材でも上手に作れば船に使えますし、重い材ほど密度が高くて丈夫ということは見習いでもわかると思います。
ただし密度の高い材を継ぐにはそれだけ高い船釘が必要で、木釘では頼りないです。マダガスカルにはその強い木釘はありません。マダガスカルでは木釘の利きやすい軽い材を使うか、重い材に鉄釘を使うかのどちらかです。写真のような鉄芯も見たことありません。
S:「耐久性」が何を意味するのか、よくわかりませんが、2か所訪問したうちの一か所は中古船の修繕をしていました。修繕と言っても、もともとの船にさらに板を足して容積を増し、ペイントのし直し、という形の修繕のようでした。うまく伝わるでしょうか?
材木のこともそれほど聞き取れていませんが、何人かに聞いたのがセネガル南部のカザマンスからということでした。ど素人の私の目には、材を使い分けているようにはほとんど見えず、唯一、船底の中心の梁(?)の部分は見た目にも強度のありそうな材が使われていました(ただし、一本の木ではありませんでした)。
ボディーの部分は、本当に継ぎ接ぎのようで、隙間だらけ。こういう隙間をどうするのか、と聞いたところ、上にあるようにプラスティックでコーティングするから大丈夫、ということでした。
ちなみに、「船釘」とは、そうした専用のものがあるのでしょうか?ここで使われていたのは写真のようなものしか見当たらなかったのですが。

I:船釘、日本には船大工さんだけが使うものがありますが、マダガスカルでは一般的な鉄釘や鎹(カスガイ)を使うことが多いようです。鉄筋材はまだ見たことありません。
船底の中心の梁は竜骨(keel)と言います。ここはいちばん堅い材を使うはずです。他の材を支えるし、浅いところで破損するリスクも高いので。
隙間は、インド洋各地ではアフリカ側もアジア側も綿を詰めることが多いです。昔はココヤシ繊維を使ったのではないかな。
S:いろいろご教示いただきありがとうございます。とても勉強になりました。何とか毎年通って引き続き少しずつ勉強したいと思います。
いずれどなたか若い研究者が入ってくれると嬉しいのですが。

I:ヴォルタ川とも比較してください。ニジェール川では、刳り船部分に材を継ぎ足して高くするのではなく、ふたつの刳りぬき材を前後につなぐという技術を見て驚きました。左右につないで幅広の船を作るという技術は日本にもありますが、前後というのは初めてでした。文献にはあるのかな?



S:技術的にも特殊なのですね。それが分かっただけでもモチベーションになります。ヴォルタ川の漁民も船も全く見たことがなく、全くイメージがありません(しかも、この先何年行けないままなのか…)。しかし、これまで農耕民のばかりに目が行っていて、ヴォルタ川の漁民など全くの不勉強でした。文献、帰国したら少し調べてみたいと思います。




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