モフセン・マフマルバフ(監督)『独裁者と小さな孫』2014(ネタバレ注意)

(http://dokusaisha.jp/story.htmlより)

改めましてあけましておめでとうございます。

大晦日、2つ原稿を出してから少しお休み。元日は完全に正月をやって、ドロドロに溶けてしまいそうだったので、正月二日は映画初めに。何を見に行くかは連れにお任せ。「これくらいかな…」ということで、お昼前に出発。

さて。本作はモフセン・マフマルバフ監督の作品。マフマルバフ監督で思い出すのは『カンダハール』。9.11直後のアフガンを描いた作品として、一世を風靡した。僕も、この作品を見たし、『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』(マフマルバフ著)という本も読んだ。これらが2002年らしいので、15年ほどが経つ。その後のマフマルバフ監督の動向を僕はよく知らなかったけど、パンフレットによると、イラン政府から作品が上映禁止になったり、暗殺未遂まであったそうな。その間もたくさん作品を世に出しながらもずいぶん多難な15年を送られていたらしい。まあ、それくらい影響力のある作品を作ってきた、ということでしょう。

この作品、とある国の独裁者が主役。この独裁者は暴政を引き、国民は極度な貧困状態に陥っている。この独裁者には溺愛する孫がいる。この独裁ぶりは、孫をあやすために、街の電気を付けたり切ったり、そんな光景に象徴的に表れる。そんな中でクーデタがおこる。家族は早々に国外に退去するが、孫は宮殿にいる幼馴染のマリアやおもちゃと離れたくないといい、大統領と残ることに。しかし、事態は急激に変化する。住民が暴徒化し、大統領は追われる身に。空港に引き返すも、空港から追われ、途中の村の床屋の服を略奪して変装し、次第に身をやつしながら、孫とともに安全地帯の海を目指す。

逃亡の旅の中で、大統領は自らを罵倒する庶民たちの声を聴く。しかし逃亡中の大統領は何も語らない。彼の表情は硬く、時々トリッキーな動きをする孫息子に対する言葉しかほとんどない。その中でも、おそらくクーデタによって解放された政治犯とのやり取りは、監督がマフマルバフであることを考えれば、近年、様々な国家の長期政権が暴力的な方法で打倒される中で、「民主主義」とはなにか、ということを根源的に問い直しているシーンに見える。

実は、マフマルバフが監督であったことは、帰りのバスに揺られながら、パンフレットを眺めているときに気が付いた。映画中に知って入ればさらに関心が強まったのだが…



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