【科研費関連調査】ブルキナファソ20240809-19②:「父と息子」
レストランに貼られていたポスター 「父と息子 人民の偉大なる勝利」 |
多くの方が西側諸国から距離を取る現在のサヘル三国の行く末を案じているように思いますが、おそらくこの地域が進む方向性は大きく変化しつつあると思います。私はこれまで、様々な場面で、ブルキナファソやサヘル三国のフランス(西側)離れを評価してきました。
確かに、国際政治という大きな流れから見れば、これまでも、また、この先の一定期間は覇権を維持するであろう、西側から離れてしまうことは、この国の抱える貧困問題を考えると、どこか後退してしまう要因になるかもしれません。しかし、「政治」という上部構造の示す大きな力は、この地域の特に都市民の間では、思いのほか民意と強く連動する仕組みになっているように思います。これは、私が話をするようなその辺のおっさんの言うことが、実に的を得ていたり、その通りになったりする経験から私が感じていることです、そして、そうした、市井の人びとの話を聞いていると、このまま親仏的な政治を続けていくことで、政治が上滑りすることは、大きな間違いでないとも思っているので、余りに根深く強いフランスへの恨みを感じている私にとっては、やはり現在の軍事政権も、そうしたこの地域独特の「民主主義」の結果ではないかとも思っています。
以前、写真を出した交差点に掲げられるサヘル三国とロシアの旗、その横にある現大統領の写真は、トラオレという、クーデタで政権を奪取した30代の大統領の必死のプロパガンダに見えます。ニュースに出てこないことが多いですが、こちらの人びとの話を聞いていると、非常に強硬です。首尾一貫してテロリストに抗する姿、テロ、そしてこの地域の貧困の元凶であったフランスに明確にNOを突き付けた姿は、サンカラに模して受け入れられています。何人からか話が聞けたのは、トラオレ大統領就任後、実効支配地域は10%(60%→70%)上昇したことだったり、難民化した人びとが出身村に帰ることができるかもしれないという、肌感のあるテロからの解放の兆しでした。こうした、「強さ」や大統領の若さ、そして、フランスに対して真っ向から対抗していく姿は、当初から「サンカラ2世」の呼び声高く、圧倒的な支持を得る大きな要因の一つとなっていたことは間違いありません。今回は、明確なイメージ戦略(写真)も展開されていたのが印象的でした。
今回の滞在時に機会のあったジョセフ・キ-ゼルボ大学のウェドラオゴ先生から聞いた話です。ワガドゥグ市内の何か所ものラウンド・アバウトにはためく国旗の元には、毎晩若者たちが集い、都市へのテロリストの侵攻を警備していると言います。モシの社会には、コロゴウェオゴという自警の仕組みがありますが、こうした文化的な慣行も関連しているのでしょう。先生のゼミでは、こうして毎晩集まる若者の考えを聞き取っているそうです。ブルキナファソのナショナリズムの研究論集になるのではないでしょうか。
何度も繰り返しますが、このトラオレの高い支持率の軸は反仏路線ではないかと思います。西側を象徴するフランスへの抵抗と拒絶は、この地域の積年の願いであり、これは決して政治的なパフォーマンスではなく、人びとの間に深く根を下ろしていることを感じます。そして、フランスと手を切り、ロシアと手を結ぶことで、テロリストの侵攻を防ぎ、押し返している、という実感は、益々フランスのプレゼンスを下げているように思います。まだかろうじて大使館を残しているものの、フランスのODAはストップし、「脱税」をしていたフランスの企業が糾弾される光景は、私の滞在中にも複数回目にしました。そして、物理的な繋がりとしても、エールフランスに代わるサービスが補完するようになり、もはやこれも無用になりつつあるように思います、ポジティブな面ではNGOの支援が引き続き民間を繋いでいるものの、フランスは公私セクターを通じて過去のものになりつつある、ということは、今回の滞在で益々感じたところです。
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