フィジー調査 その2

「バナキュラーVernacular建築(その土地の特徴に合わせた古来からの技術や素材を使った建築)」。ちょっと前まで、僕のブログでは「風土建築」という和辻哲郎の言い方を借りていたのですが、 こんな言葉の方が正しいらしいので、そのように直します。

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今回のフィジーは、以前から少しずつ紹介しているカッセーナのバナキュラー家屋研究の関連なのですが、双方に共通するのは、まだギリギリでこうした家屋が生活空間として機能しているものの、それらはほぼ消えかけている、ということです。文化人類学的な視角からとらえるとすれば、伝統のあり方の議論(「創られた」のか?)とか、文化財としての捉え方、また、文化財保護の在り方、そして、人間にとって「住まう」とはどういうことなのか、など、様々な点からアプローチできる興味深い研究課題です。そして、家屋を社会的な側面から考えた時、一つの家屋に住むのは、「家族」という社会の最小単位によって構成されていますから、当然「家族」の問題も大きな課題となります。

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フィジーで伝統家屋とされるのは、ブレBureという草ぶきの家屋です。今回訪れた、Cautataには生活をしている家屋としては一軒も残っておらず、Navalaはほぼすべてがブレという状況です。Cautataは、そこはそこで、とてもカラフルな建物が並び、とても美しい村なのですが、Navalaは全くの別世界。

Navalaは空港のあるNadi(ナンディと読みます)から車で3時間ほどの山間に位置するのですが、途中いくつも山を越え、何本もの川を渡り、切り立った山の間の谷間を抜けたところにあります。山間の緩い斜面に整然と並ぶ草ぶきの屋根屋根は、まったく異質な光景を醸し出します。村に入ると、美しく借り揃えられた下草、ほとんどの家屋が垣根を持ち(しかもよく手入れされている)、そして何より、背の高い茅葺の家々は、もう映画のセットのようにしか見えません。しかし、張りぼてでもなんでもなく、人びとが実際にここで暮らしている。その意味でも実に興味深い村でした。

今回は、雨季の終盤ということもあり、Navalaにたどり着けたのは、3回目のアタックでのこと。そのため、実はこの村にいたのは実質的には4-5時間のみ。残念ながら、調査らしい調査はできませんでしたが、まずはこうした景色を目に焼き付けることができただけでも収穫。もう少し勉強して次回の調査に備えようと思います。


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