井の中の蛙大海を知らず

僕ら研究者は、「発見」とか「伝統」とか、その言葉そのものの意味とは違う意味で使用していること(ある意味皮肉を込めて)を示すために「」をよく使う。この方法は、読者/オーディエンスからの批判を躱すために用いられることが多いのだけど、今回の調査、まさに「発見」が多かった。つまり、「発見」したのは僕であって、そもそも僕が発見したと思っていたものは、そこにあったのだ、ということ、そんなことを書いてみたいと思う。

今回の調査、5団体のNGOと関わった。特にそのうち3団体については、初めて見せてもらったNGOで、その方法やこれまでの活動、はとても興味深かった。

僕はプロジェクトの仕事として、アンドロポゴンという雑草の人びとの利用を観察している。この草は、西アフリカの乾燥地では家の屋根を葺いたり、穀物庫を作ったり、庇やトイレの目隠しなどにも使われている、ここの生活でもとても大切なものだ。


水の流れや風によって表土が流出してしまうことで、農業生産性を下げ、その結果、その土地を放棄してしまう。これが僕らのいう「砂漠化」のサイクルの一つなのだけど、「砂漠化」を防ぐ一つの方法として、このサイクルを止めることが大切になってくる。しかし、このためにはこれまでにもたくさんの方法が編み出され「実行されている」のだけど、どれも一長一短、なかなか根付かない、という前提があった。そこで、アンドロポゴンがここの人たちの生活に重要な位置を占めている、つまり、売れる、さらにつまり経済的なインセンティブがある、ということを考えた。

今年5月の国際学会で発表した時も別に誰が見に来たわけではないけど、まあ、僕も「これはいいアイディアじゃないか」と思っていた。実際に多少なり確実に効果があるのだけど、見る人が見ないと、この効果はわかりづらくて、「砂漠化」がとまりました、とは言いづらい。

まあ、しかし。こんな話をNGOの人たちとしていると、みなニコニコして聞いてくれる。「そうだよね」って。そしてこう繋げる。

「明日見に行くサイトにそれをやっているところがあるから、ぜひ見に行きましょう」。

果たして。それぞれの村にはかなりの頻度でこの技術が実践され、どうももう10年くらい前から行われているようなのだ。それを新しいものとして、紹介しようとは…現場を見たから感じた恥ずかしさで、ここからまた始めればいいのだけど、去る国際学会でもそんなこと誰も言ってなかったな、と思うと、いかに研究者が適当か、ということがよくわかる。

サブでやっている研究なので、進展は非常に遅い。でも、今のプロジェクトのおかげでずいぶん現場も見せてもらってやっとここにたどり着いた。問題の在処をもう一度精査して、もう少しお役に立てるような研究にしていきたい、今回はそんなことを感じた。


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