第47回アフリカ学会@奈良①

5月29日、30日のアフリカ学会で発表してきました。

一応、ここのところの自分のルールで、アブストラクトは出しておくことにしているので、以下の通り公表しておくのですが、少し内容を変えました(普通の学会ではご法度ですが…)。

どう変えたか、というと、都市計画により離散した、旧住民たちのつながり(=「共同性」)が茶会を再現することによって保たれている。という話にしました。

同枠にお美しい女性がお二人発表されていたので、聴衆のほぼいない状態での発表を想定していましたが、アフリカ研究の人気者の座長と私の次に発表となっていた、アフリカの商人の「狡知」を研究しているOさんのおかげで、えらい盛況のうちに終わりました。

しかも、我らがS先生にかみつかれる、というおまけ付き。

「二つ質問があるけど、ひとつは後で聞くから…」とおっしゃり、会場は失笑(?)に包まれ、割と和んだ雰囲気でした(学会では、指導教官は黙っているか、炎上した時の火消、というのが通常なのですが、うちは割かしガチンコなのです…)。
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ワガドゥグの都市計画と住民生活の変化-ZACA計画を事例に
清水 貴夫
名古屋大学大学院文学研究科 博士後期課程
Urban planning on African city and its impacts toward population: case study of “Projet ZACA” on Ouagadougou, Burkina Faso
SHIMIZU Takao
Nagoya University, Graduate School of Letters

発表要旨

 2003年12月、ブルキナファソの首都ワガドゥグの市中心部に位置する通称ザングエテンZanguetinの街は1987年に計画されたザカ計画Projet ZACA[i]に従って破壊された。住民はザング’エテンから追われ、主に政府が用意した代替地、通称トラム・ダキュイTram d’accuilleに移住を余儀なくされた。本発表では、ザングエテンからトラム・ダキュイに移動した人びとの生活変化を追い、近年、殊にアフリカの都市で見られる都市計画が住民の生活に与える影響を考察することを目的とする。
ザングエテンは、1950年ころ、ハウサ人たちによって形成された街区である。彼らは、ワガドゥグにイスラームを持ちこんだ人びとの一部であり、ワガドゥグで最初の金曜モスクが建立し、イスラーム的生活世界を営んできた。外来者も積極的に受け入れられ、都市空間の中においても特に多民族な世界を形成してきた。その結果、約800人とも言われた高人口密度の空間を形成した。しかし、そこは、乾季にも汚水があふれ、決して清潔な生活空間ではなく、経済的に豊かでもなかったと言われ、政府のザカ計画実施に格好の理由を与えたことになる。その結果、移住した住民は、経済・社会的な影響を受けた。本発表では、まず、都市計画による住民の経済・社会的生活変化を検討する。
そして、ザカ計画事務所の担当者の、「一般的には旧住民の生活は向上した」と言う見解からもわかるように、ザカ計画は、一部で住民生活を近代的な意味で向上させた。すなわち、清潔で十分な広さの住空間の確保といった面である。さらに、指摘しなければならないのは、若者たちの変化である。ザングエテンのイスラーム的社会は、貧困者のセイフティネットになっていた半面、本来労働しなければならない年代の若者たちの不労働を許容してきた。旧住民の中にも、ザカ計画によって従来のイスラーム的社会が崩れることで促された若者たちの独立を、この都市計画の副産物として主張する者がいる。
ところが、ほとんどすべてのザングエテン旧住民への聞き取りからは、こうした楽観的見解は聞くことができない。ザングエテンの旧住民の多くは、現在いくつかの街区に分かれて住んでいるが、未だにザングエテンの知己との関係性の中で生きている。そして、彼らがザングエテンを語るとき、それらはザングエテンの在りし日の暖かな家族的社会を語るのであり、ノスタルジックである。また、ザカ計画が老人の死と共に語られ、ザングエテンの家族的世界との断絶を象徴的に語りも多数耳にした。
これらの聞き取りデータから、ザカ計画が与えた影響は、経済・社会的な変化以外に、住民間でより語られるザングエテンで醸成されたミクロな人間関係の変化にあることを論じていく。
[i] ワガドゥグ市のZACA(Projet Zone des activités Commerciel et Administration 商業行政活動地区)を改善させるための都市計画。

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