京都の本屋の新たな展開

20150915閲覧、http://lmaga.jp/blog/news/2015/09/seikosha_horibesan.html

今朝、こんな記事を見つけた。我が家から徒歩なら10分強、チャリなら5分、そして僕の通っているスポーツジムの向かい側。恵文社という本屋の店長さんが独立するという。

職業柄、本屋は嫌でも時々は足を踏み入れる。確かに、アマゾンなどなどのせいで以前に比べれば回数は減ったが、それでも、日本にいれば、毎月数回は古本屋なり、大き目の本屋なりは仕事の一貫としていかねばならない。

4年前に京都に引っ越してきたときに、知人に「一乗寺あたり」というと、美味しいたこ焼き屋があることとラーメン街であることと、この本屋があることを教えてもらった。確かすぐには行かなかったが、しばらくしていってみると、実にお洒落な内外観に、草食系というか、山ガール的な、人畜無害そうだけど、それなりにクセのありそうな(失礼。ほめ言葉なのですが…)店員さんたち、そして何より、これでもかというほどのマニアックなラインナップ。東京なら、下北の端っこでやってそうな感じ、そんなイメージを持っていた。

ただ、レヴィ=ストロースなんかも、「構造主義」という枠組みで扱っているようで、多少なり専門領域に引っかかる本があるものの、僕としては、あまり使い勝手のよい本屋ではない。でも、考えの幅を少し広げたいな、と思ったときには実に面白い。

ともあれ、これまで15年間、この店をリードしてきた店長さんが独立されるとのこと。恵文社の方は十分に軌道に乗っているとは思うので、これはこれで維持してもらい、新たな本屋の方に期待したい。これだけ本屋がやっていけない時期に、新たな本屋を始めるというのは、とても大変なことだと思うし、逆に店長さんの自信の表れでもあろうかと思う。

11月に開店とのこと。

20150915閲覧、http://lmaga.jp/blog/news/2015/04/gakesyoboutohohoho.html

うちの近くには、もう一軒有名な本屋がある(った)。ガケ書房という、北白川にある本屋なのだけど、車が突き出た、妙な外観の本屋で、初めて見たときは「何屋??」と思った。これは過去形で、今年の4月に北白川から浄土寺の方に店舗を移転。社名も「ホホホ座」と変えて再出発。

この記事を読むと、「ホホホ座」が中心となって、浄土寺エリア自体の雰囲気を変えてしまいそうだ。この辺り、あんまり歩いたことはないが、レコード屋、お惣菜屋、カフェと続々オープンさせようとしているらしい。

そして、「ホホホ座」は尾道にも。「空き家再生プロジェクト」というNPOが中心となり、「三軒家アパート」という古いアパートをリフォームしながら若者たちが様々な試みをしている。その中に、「ホホホ座」もオープン。先日の尾道訪問のときに訪問したら、店舗は小さいながらも、厳選された「オシャレ本」がきれいに陳列されていた。
こうした元気な本屋の試みは、以前このブログでも紹介した、名古屋の古本屋にも見られた。これはいろんなところでしゃべっているので、このブログで書いたかどうか定かではないが、東京の早稲田通り。僕が中高校生時代をすごした街だが、以前は神田に次ぐ古本屋街として有名だったが、ここ数年間ですっかりラーメン街道になってしまった。ラーメン屋が増えることはそれはそれでいいのだけど、これは経営者の高齢化などの問題があるとは思われるものの、学生が本を買わなくなった、ということの裏返しでもあるのではないか。僕は一読者として、多少なり切実にそのことを考えている。なので、京都の有力な「街の本屋」さんの試みは、出来る限り応援したいと思っている。

朝からずいぶん長く書いてしまったけど、恵文社の元店長、現在の誠光社の社長(?)の堀部さんの誠光社の社是というか、マニフェストを拝借しておきたいと思う。静かな文体だけど、今の時代への憤りや本に対する熱い思いが伝わってきます。さすが本屋さん、という文章にて。

「街から本屋が姿を消しつつある。そんな話をここ十数年いたるところで耳にしてきました。もう聞き飽きたという方も多いでしょう。メディア上ではノスタルジーと感傷にまみれた言葉が飛び交い、危機感を伴う記事もあちこちで目にします。話題になりながらも新刊書店は増えるどころか減る一方。百万冊規模のメガストアや、企業がバックアップする複合店がオープンしたというニュースは雑誌やSNSで目にしますが、雑誌や文庫を取り揃える個人経営の本屋が最近開店したという話は、寡聞にして知りません。

「街の書店」についてこれだけの言説が飛び交う中、なぜ新たに本屋が生まれないのでしょうか。その理由のひとつに、流通を一手に取り仕切る大手取次店との契約が困難なことや、その流通上の問題から新刊書の販売利益がごくわずかしなかいという、構造矛盾があります。脱サラをした書店員さんが新刊書店を立ち上げるにはあまりにも高い障壁が目前にそびえ、それを乗り越えたとしても、本という商材だけではとても経営が成り立たないのが現実です。

システムに無理があるならば、改善し、あらたなルールを提案すればいい。本屋の話はもうやめにして、本屋をはじめてみよう。

誠光社は本屋の新しいあり方を提案すべく始めた、ささやかな実験でもあります。できるだけ出版社さんから直接本を仕入れ、双方の利幅を確保する。最小限の規模で、できるだけ店主が選書も店番も取引先とのやりとりも行う。売り上げを確保するため本以外のメディアを扱う際には、できるだけ本と親和性の高いものを選ぶ。土地に根付き、お客様に影響され、店主自身も勉強しながら商品構成が変化し続ける。姿形はこれまでに親しまれてきた街の本屋でありながら、経営のあり方はこれまでと一線を画する。そうして出来た店が、これからの当たり前の本屋であることを願っています。

本屋は街の光です。誠光社の試みが広く認知され、同じスタイルの本屋が全国に百店舗できれば、薄暗くなりつつある街も少しは明るくなるはずです。今回の試みはできるだけオープンにし、本屋を志すみなさんと共有し、参照できるよう発信するつもりです。

この試みに賛同し、われわれと直接取引してくださる版元さまを募集しております。」
20150915閲覧、http://www.seikosha-books.com/about/




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