安渓遊地+宮本常一2007『調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本』みずのわ出版
『調査されるという迷惑…』。僕らフィールド研究をする人間がいつも気遣わないといけないことです。 研究関係のMLで「本の紹介文を」ということで、久しぶりに読み直しました。いつも研究室の机の本棚においてあるお気に入りの本です。昨日より尾道に来ていますが、事前にとある方に面会を申し込んだのですが、「今まで何人も来られているから」と断られました。アフリカで調査をしていると、ほぼ断られることがないので、実な少々驚いてしまったのですが、ちょうどこの本を読む機会に恵まれ、改めてそんなこともよくあるのだ、ということを改めて実感しました。 この投稿は、FENICS(Fieldworker's Experimental Network for Interdisciplinary CommunicationS)というフィールドワーカーの集まりのMLに書いたものです。 ******************************* 「フィールドに『もっていく』本」か「音楽」か…というリクエストだったが、「フィールドに『出る前』に読んでおく本」を紹介したいと思います。 海外であれ、自分のホームであれ、いかに調査先との関係を築くか、調査中を過ごすか、そして、どうやって調査先に成果を還元するかはそれぞれのフィールドワーカーが悩むところでしょう。本書では、第 1 章の宮本の「調査地被害‐される側のさまざまな迷惑」を枕に、安渓のフィールドにおける調査地での被調査者やその外側にいる人々との間の苦悩の経験、そこから安渓のフィールドへの成果還元や付き合い方についての考察の記述が続きます。私たちの調査にどれほど学術的な意義があろうと、調査される側にとっては然程のことはない、むしろ迷惑になることすら少なくないこと、研究成果の還元をいかに考えるかについて本書は多くの示唆を与えてくれます。 幾多のフィールドワークの教科書でお題目のように唱えられるフィールドとの「ラポールの構築」。調査・研究が進むほどに、手元において、「調査に出る前」に読み返してみたい思わせる本です。 ******************************* *****目次***** はじめに 序章 宮本常一先生にいただいた言葉(安渓) 第1章 調査地被害‐...