【映画】「荒野に希望の灯をともす~医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~」(日本電波ニュース社, 88分)


 今年は忙しい中、割と映画が見られているのがうれしいです。

12月4日は中村哲さんが凶弾に倒れて5年目なのだそうです。SNS上には、中村さんのような政治家が…とか、国民栄誉賞を…とか、いう賛辞の言葉が躍っていましたが、私はそんなことは微塵にも思いませんでした。清廉潔白で、利他的で、さらには頭脳明晰、どんな職業であっても成功すべくして成功した方のはずですが、大変幸いに「医」という人を癒す仕事に進み、その究極を突き詰めた方ではないかと思います。

中村さんにとっての「医」とは何だったのか?上医、中医、下医という、「医」の考え方があります。中国の陳延之の著書『小品方』に由来しているそうですが、一番有名なのは、「上医は国を治し、中医は人を治し、下医は病を治す」というもの。ほかにも、こんな会社くがあるそうです。

その1、上医はいまだ病まざるものの病を治し、中医は病まんとするものの病を治し、下医はすでに病みたる病を治す。
その2、上医の勤勉な医者は、毒さえも薬となして人を助ける。中医の凡庸な医者は、薬を薬として使って人を助ける。下医の怠惰な医者は、薬を毒となして却って病を重篤にする。
その3、化学合成薬を使って治療する医師を下医と言い、漢方医のことを中医、そして食事で病気を治す人を上医、つまり食医と言う。

医師にも関わらず、地形を学び、土木技術を学び、現地の言葉を学び、そして、約230haの砂漠を緑に変える…こんな評価をしてしまうことすら烏滸がましいですが、上医中の上医と言えるでしょう。そして、下の記事を見ると、次世代も育ち、中村医師亡きあとも地道に活動を続けられているあたりは、ペシャワール会の組織としても大変高く評価されるべきだと思います。

そして、私も長く砂漠化対処には関心を持ち、「緑のサヘル」というNGOに関わっています。コロナの影響で活動はかなり縮小しましたが、そうした視点から見ても、中村哲さんの見通しや行動力は、およそ我われ凡人にはたどり着けない境地におられたことを実感します。

昨年、中村哲さんのドキュメンタリー映画(この映画の劇場版)が公開されました。今回見たのは、そのDVD版です。言わずと知れた、食が紛争を止める、という食こそが平和の根源、という中村哲流の哲学が、体現していく様を大変わかりやすく映像にしておられるように思います。中村さんの仕事と並び、監督の谷津さんの根気強い取材にも敬意を表さずにはいられません。

【NHK 映像あり】
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241205/k10014658981000.html

文春オンライン(澤地久枝さんへのインタビュー記事)
https://bunshun.jp/articles/-/75288?page=2

読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/world/20241204-OYT1T50008/

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