ソウルフードと恩師
高校生のころはやんちゃでした。親にはもちろん、先生方をはじめとする多くの大人に迷惑をかけてきた、と今も時々思う。 「死ぬ前に何が喰いたいか?」 と聞かれたら、迷わず「メーヤウのチキンカレー」と答える。「安い奴だ」と言われようが、ここのカレーは何物にも代えがたい。たぶん、この店に一番長く通う客の一人だろうし、味の変化に一番敏感な客のつもりで、カレー自体に愛を持っている。大概の客と微妙に店の対応も違う。常連客の心もくすぐる店で、店にも愛着がある。そして、ここに来ると、母校の前を通ることになり、いつも高校生のころを思い出したり、迷惑をかけた恩師のことを思い出す。たくさん理由がある。 いつも調査に行く前には必ずここのカレーを喰う。大の飛行機嫌いとしては、飛行機が落ちた時に後悔しないように、とかいう言い訳だかなんだかわからない理由を自分に言い聞かせてここに向かう。昨日は、今回の調査前に行けなかったから、その埋め合わせなのである。別にそんな理由はいらないのだが。 相変わらず旨い。ここだけはダイエットを忘れ、存分に楽しむ。 そして帰り際。駅への道に懐かしい顔を発見。 M先生。冷静沈着で鉄面皮。優しいわけではないけど、たまに見せる顔に人柄がにじむ。さすがに60に近くなった先生は、少しお腹周りに肉がつき、なんか小さくなったような印象を受けた。 そしてなぜか、「勉強してます」のような言い訳をする。その態度にキョトンとしていた。親が一生親なように、先生も一生先生なのかもしれない。