『BT63』池井戸潤 講談社文庫

アフリカでの調査、小説の何冊かは持って行かないとすっかり娯楽を失う。普段なかなか読めないので、大体表紙を見て直感的に買う。そんなわけで、今回も調査前にほかの買い物がてら小説コーナーでなんにも考えずにパパッと小説数冊を購入。しかし、この「BT63」[[[[[下]]]]]と書かれた一冊のみをカバンの中に発見…下巻から読んでも面白くない、と思ってきれいなまま日本に持って帰ってきた。帰ってから上巻を購入し、いざ!


著者の池井戸氏、銀行ミステリーの名手だとか。まだほかの作品を読んでいないので、何とも言えないけど、この本については金融系の話は話の骨格ではそれほど重要ではない。それよりも、構成として面白かったのは、夢の世界と経験したことのない父の記憶が、まったくずれた焦点が次第にあっていくように、話が整合してくところだろう。その意味では少々ファンタジーの臭いすらする。もしかしたら「昭和」の時代を書きたかったのかな、とも思わせる。





決して読んでいて不快な感じはしないのだけど、スッキリしない小説だな、というのが率直な感想。まず、BT63の「63」が何を意味するのか分からない(たぶん、昭和38年の西暦?)。「BT21」というトラックは出てくるけど、どこかで示唆してほしかった。あと、琢磨(息子)の離婚や病気などがどうも話の展開で意味を持たない。結構大事な話のようなのに。

夢の世界と現実世界を行き来する琢磨を「精神病」の設定をすることで、この話にある種の厚みを持たせているのはわかるが、はたして、別に「精神病」であった必要性があっただろうか。銀行出身の筆者の嫌銀行の世界感はわからないでもないけど、逆にわざわざこの設定にしない方がよかったように思う。

そんなわけで、カタルシス不足、話の根拠がよくわからないなど、とても傑作とは思えないけど、読んでもいいかな、という感じ、だということだけは記録しておく。

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